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ことりさんゆうびん 第7号

6.20/1995

 

ご来訪のおすすめ

 旅する人にはこの地での一番良い季節がやってまいりました。九州へはまだ行ったことがない、あるいはもう何年も行ったことがなく、ふと出かけてみたくなり、そのとき「えこるおぎ」の様子も何となく気になる方のためのご案内です。

 荻町は熊本県境にありますので最寄りの空港は(大分空港ではなく)熊本空港です。TVアンテナも熊本に向けてしまいました。空港から阿蘇を横断して大分への高速バスは一時間に一本出ています。荻町には国道がなく、交通事故死ゼロが3333日連続した、なんていう記念行事があったりします。保育園児のパレードが行われたりしました。バスも荻町をかすめて、竹田ドライブインというのがもっとも近い停留所になります(空港から1時間20分)。JRだと豊後荻という駅が町の中心にあるのですが、これがとんでもない過疎駅で、興味のある方は豊肥本線の時刻表をご覧ください。そこで特急の停まる豊後竹田駅がJRの最寄り駅いうことになります。どのような交通手段であっても、それからさきは車の送迎が必要です。

 えこるおぎには何とかプライバシーが保てる部屋がひとつありますので、気が向いた間滞在していただくことができます。ただし以下の制約があります。

 朝は早くから騒々しくなり(学校があるとき)、夜は早くから静かにしなければならない(近頃は10時ぐらいまで何とか起きていようとしているのですけどもね)のは田舎暮らしの通例です。とは言っても、朝遅くまで寝ていて朝ごはんを自分で作って食べるというのはご自由です。夜も別に消灯時間なんてのはありません。夜ご飯だけはみんな一緒です。その他の時間は何をしていてもよい、というか、自分で何かしないと誰も何もしてくれません。雨が降ると無理やり温泉に連れて行かれるかもしれませんが、そうでなければどこかへ出かけるにも自分で運転する必要があります。つまりこれらの制約の他は何でもできます。

 ぶらり寄るだけ、あるいは短期滞在のみであとは九州旅行、というときは、近くでは阿蘇の地獄温泉、小国の黒川温泉、それから湯布院、なんていうのがお薦めです。そこでお薦めのコースとしては、一日目えこるおぎ泊、二日目湯布院泊、三日目宮崎シーガイアまたは長崎ハウステンボスなんてふうになります。(えこるおぎに一ヵ月滞在して原稿を仕上げる、なんて用途にもどうぞ)

筆がすすまぬときは

 筆が進まぬときは筆が滑らかになる事柄から。

 焼酎は、好かんとったたい。(好きではなかった、と言うにはこうでいいのかな。好きではない、という現在形であるなら簡単なんですけどね) あの坂口謹一郎先生が著作で、焼酎も何年か寝かせれば世界の蒸留酒に比肩しうるのに、と何気なく書いておられたのが潜在意識のなかに深く入り込んでいたようで、こんなに趣に乏しい、ただ酔うだけのための、飲みにくい酒、と思いこんでおりました。それからまた、蒸留酒は蒸留してわざわざアルコール分を濃くしたのだから、それをまた薄めて飲むのでは理にかなわない、という思いこみもありました。そこで焼酎もそのままお燗して飲んだりしてみて、ますます印象を悪くしたのでした。

 焼酎の飲み方が間違っていたのでした。焼酎は、ウィスキーやなにかと同じ調子でオンザロックでぐびりとやっていたのでは、ただ荒々しさだけが特徴のお酒です。やはりお湯割りが一番、それも昔からそうされてきたように、お湯の量を六四ぐらいに多めにするとなお具合が良いようです。(昔からの叡知に気付かずにいることがいったいどれだけあることでしょう) 焼酎は材料が様々で、それぞれみな風味が大きく異なりますので、最適な飲み方さえ心得てしまえばこれほど楽しめるお酒もありません。

 そんなわけで、今は米、いも、麦、黒糖の四種類の一升瓶が並んでいます。米、いもはすぐにそれとわかるそれぞれの風味、麦は一番癖がなくすっきりとしているようです。黒糖はラム酒の趣があるといううたい文句です。人参の焼酎なんてのはあまり飲みたいとは思いませんが、ウィスキーと同じ材料、ブランデーと同じ材料の焼酎なんてのがあるといいですね。もちろんアルコールを工業的に生産し、それを水で薄めて焼酎と称する代物なんてのはお断りです。

花の季節

 こちらに来て四作目ともなると、初めての頃の何でも作るというのと少し違い、徐々に栽培品目の重点が絞られてくるようです。作業の手順も要領がよくなり、無駄に時間を費やすということが少なくなってきたかもしれません。色々余裕がでてくると、作業の合間にゆっくりと花壇や畑や果樹園のなかを歩くことができるようになりました。

 今年は去年とは違って雨の多い梅雨なので、ラベンダーは雨のなかで花をつけ始めました。株がひとまわり大きくなり、畝間がすっかり花穂に埋まっています。春になってムスカリ、水仙、アネモネ、チューリップと咲き始め、それが六月の花ざかりとなり、このころが何と言っても一番美しいみたいですね。緑の牧草のなかに次々と花をつけるポピー、玄関の柱にからんでいる上品な香りのハニーサックル、ローズガーデンのバラ、ハーブガーデンのハーブ。ハーブには毎年新たな思いなのですが、今年は少し変わったヤロウで、素朴な色々な花をつける種類にひかれました。デルフィニウムは冷涼なこの地の夏によくあったようで、大きな株からたくさん花をつけます。

 果樹園の下草の牧草は、初めのうち窒素不足のようでしたが、気温が高くなるにつれて青々としてきて他の雑草を駆逐しています。一度きれいに刈ると───このときもっとも普通の果樹園らしくなるのですが、一早く再生し、雑草を圧倒します。一年性の稲科の牧草は夏になると穂を出して消えてしまうので、今年はペレニアルのライグラスをまいてみました。しかしこちらの方は雑草に対して少し弱いようです。今度の秋には豆科のベッチ類を試しに蒔いてみようと思っています。

 このように重点は花卉と果樹になってきています。野菜は自分のとこで食べるだけにして作業を手早く切上げ(しかしどうしても食べきれないくらいできてしまいますが)、ガーデンの草取り、果樹園の剪定、誘引にいそしんでおります。とは言いましても、米、大豆等々の主要作物は別ですので項を改めて...

米その他

 米の作業暦。今年から本格的にEM菌の運用をしております。前年秋のうちに田んぼに糠とEM菌を撒き、酪農家に無理を言って(例年ですと春になってからであるのに)牛糞をまいてもらい、軽く耕耘してEM菌の繁殖に努めます。それを春もう一回し、さらに水を入れてからEM原液をほどこす、というのが完全な手順なのですが、資材不足もあって所々省略いたしました。三枚の田んぼのうち、真ん中の田は美味しそうな土になっています。他の二枚は、一枚はねきの部分が前からとても悪く、もう一枚は一昨年の水害の補修のため重機が入って滅茶苦茶にしていったため、まだまだです。

苗にもEMぼかしをほどこしました。田んぼの土を軽トラックの荷台改造のトレーラーにいっぱい積んできて、それを悠君(高校生になりました)に手伝わせてふるいでふるい、糠、油粕、魚粉が材料のEMぼかしをまぜ、苗箱の土にしました。これはとても良かったようです。種まきをして田んぼに運んだその夜から雨で大風が吹き、きれいに張った保温資材を吹き飛ばしてくれたのですが、その後は天候も上々で、りっぱな苗に育ちました。田植えのあとに余った苗は捨てるにはもったいなくて、ひとめぼれはK原さんのとこに、もち苗はS田さんとこに田植機ごと持ち込んで植えてきてしまいました。親切な岩川さん...

 田植え後、追肥もただちに行いました。このポット式苗箱の苗は、大苗であるためもあってかもともと分けつが遅く、有機肥料の元肥でもあるのでなおのこと化学肥料の田のようにぱっと分けつしません。そこでにわか百姓の心理としてどうしても焦るのです。それにまた、追肥も同じ材料のEMぼかしなのですが、有機質の肥料はいつ効いてくるのかわからず、あまり遅効きしても困りますものね。その後肥料が順調に効いているようで、元気に育っています。例年どおりイネミズゾウムシにやられて、遠目で葉先が茶色く汚れて見えますが...

 大豆、黒豆等の豆類は今年は雨が多く、種まきが遅れ気味です。この地では小豆は7月にはいってからなのですが、まだ先だなんて思っているとあっと言うまにそのときが来て、慌てることになります。雨の合間に畑の準備は早めにしておかねばなりません。今年は需要があるので花豆をやりたくて種子もわけてもらったりしたのですが、例によってまだ先だと思っていたため支柱の準備が少しもできていません。

 梅雨のさなかに収穫期を迎える麦。長雨のあとのわずかな晴間、明日には収穫しようとしていて、翌日もうあと少しのところで雨が降りだす、という苦い思いを何回味わったことでしょう。今年の梅雨は随分雨が多いのですが、それでも雨を降り尽くしたあとにはぎらぎらと晴れる、という周期性があるようです。一回目のタイミングは失したものの、その次の晴間に二か所の麦畑のうち一か所を刈ることができました。米のときと同じバインダーで雑草もろとも力ずくで刈ってしまいます。機械の調子さえ良ければ、麦は株が太いし豊産性なので畑中に麦の束がごろんごろんと転がって、刈取りはすぐに終わりです。これまでは乾燥する場所に苦労したのですが、今年からは雨除けのできる大きな作業場ができたので、そこに運び込んでおきさえすれば少しのあいだ安心していられます。残りの麦も次の機会にうまく刈ることができるはず、と楽観しています。苦い思いとこの楽観とは紙一重ですね。

皆さんありあとう

 片山鉄建の五人の皆さん、マンズレインカットの施設を建ててくれてありがとう。赤ワイン用、白ワイン用それぞれ10本の苗はどれも順調に成長しています。先日、手引き書通り一番下の針金から少し下のところで摘心しました。四本の母枝をはわせ、そこから出る枝を上の針金に誘引する、という原理は了解いたしました。この人たちは春先にわざわざ福岡から二回の土曜休みを使って、頑丈な鉄の器材と太い針金を使った施設を建てに来てくれたのでした。どう見てもホワイトカラーである人が不器用な農園主の仕事をほとんどすべてこなしてくれたのです。このぶどうで初めてのワインができたとき真っ先に送りたいと思います。たぶん来年秋です。

 「現代農業」誌の「どぶろく宝典」の取材にはるばるおいでになった貝原浩さん、あのときはあまりゆっくりお話ができなくて残念でした。年に何回も出かけるというチェルノブイリのことや、いただいた絵本の奥付からうかがわれる来し方、興味の尽きないどぶろくの話、果ては「現代農業」誌の内情まで、後になってからいろいろ思いがわいてきました。さっそく5月号に掲載してもらいましたが、あの絵からは読者はみな私たちのことを老夫婦と思ってしまいますぞ。貝原さんもいつの日かワインが送られて来るのをお楽しみに。

 K美さんは近況をお知らせくださってありがとう。大平の自然から大都会の喧騒のなかへ、初めての一人暮らしはさぞかし大変でしょうね。こちらの皆さんは、梅雨前に絶妙のタイミングでイタリアンを刈り取り、そのあとの畑(うちの前の畑にもね)に牛糞をたっぷり撒いてとうもろこしの播種の準備をしています。つい先日新しい牧舎の建築(の基礎工事)が始まり、牛乳をもらいにいくのがためらわれるほどの大忙しのようです。私のとこの子が高校を卒業するとき、その最後の教室で一人の先生が、社会に出ても窓際に一輪花をいけることのできる、その気持ちを忘れないように、と述べていて感銘を受けました。重い荷物をさらに重くしたあの花瓶は、あつかましくもK美さんの部屋の窓際を飾るためのものですから、野の花みたいな花をいけて大平を思い出してくださいね。

 東京オーキのTさん、ごぶさたしております。手配してもらった新しいパソコンは快適に動作しています。前のマシンとはくらべものにならない動作速度には驚きですね。一番下のレイちゃんが去年のクリスマスにサンタさんから「日本の野鳥」というCD−ROMの鳥の図鑑をもらい、それが前のマシンでは動作せずがっかりしていたのですが、今度のパソコンで使えるようになり、喜んでいます。それがおかしいことに、本の鳥の図鑑を見てそれをパソコンの図鑑で検索しているのですね。もう鳥の名前や何かは本に載っているからわかっているのに、です。(今レイちゃんがこのわきに来て、国語の教科書を読んでいきました。今日の宿題は本読み五回であったようです。)

 私のとこの米を購入してくださっている大勢の皆さんにお礼とお詫びを。

 無農薬有機栽培米も近頃都会では入手しやすくなってきているとのことですが、それを遠方より注文していただいてありがとうございます。一町村のなかでもごく狭い地域を指して、あそこの米はうまい、と言うようなことがあります。荻町ですと馬背野、南河内というようなところの米はよく知られているようで、関西方面から引き合いが来るということです。こういうところは谷あいの地で昔から稲作が行われていたのだそうです。原(九州では例外なく「はる」と読みます)というのは台地上の見晴らしのよいところのことで、そういうところの米は評判が今ひとつです。しかし、こう言うとどのように思われてもしょうがないのですが、私のとこの米はどう考えてもおいしいのですね。米を作っていく色々な要素のなかで、天日乾しか機械乾燥か、有機肥料か化学肥料か、という点がもっとも味に関わり深いのではないかと思っています。

 私のとこでは三分づきで食べています。白米にしてしまうとまた別の要素が関わってくるかもしれませんでしたね。

 その米がもう無くなってしまいました。定期的にとってくださっているHOKKSSTさん、ときどき注文してくださるそのほかの皆さん、大変申し訳ありません。百姓の悲しい性で、翌年度まで持ち越したらどうしよう、と売れるだけ売ってしまったようです。去年はあれだけたくさん穫れたのにこの時期にもう無くなり、今年は行政からの三割減反の指示もあって去年ほどの収量は望めないとあっては、先行きが心配です。かといって、あの草取りのことを思うと、これ以上栽培面積を増やすのもためらわれてしまいますしね...

 しかし減反というのもひどい農政ですね。多くは触れたくないのですが、収入を一方的に三割カットし、無であるところのものに補助金を給付するのです。このような行政は、かっこうの八つ当たり先です。